「おさじさん」
松谷みよ子／作
瀬名恵子／画
童心社「２・３歳児かみしばい　こぐまシリーズ」
＊現在は童心社「松谷みよ子　おはなし珠玉選」として発売されています。

またしても傑作紙芝居に出合ってしまいました。

同じ松谷みよ子さん文の絵本版「おさじさん」（東光寺啓／絵、童心社「松谷みよ子　あかちゃんの本」）は知っていました。しかし、紙芝居の存在には、不勉強にしてこれまで気づきませんでした。図書館で出合ったときには、雷に打たれたように感じました。「今、わたしはこの作品を求めていた！」神さまありがとう！

絵本の「おさじさん」を、これまでに子どもたちと一緒に読んだことはありませんでした。今わたしが接している子たちに、「おさじさん」という美しい日本語が、そのままでは通じないかな、と思って。尊敬する松谷みよ子先生や童心社さんに難癖つけるつもりは、毛頭ありません。メッセージを伝えるのに、ちょっと工夫が必要かな、と。その一工夫を、わたしがこれまで怠っていただけです。

紙芝居では、まず第１場面に、堂々と描かれたおさじさん。子どもたちが毎日毎食時に格闘している、スプーンの話だということは、一目瞭然！　脚本を読み始める前に「これ、知ってる？」１〜３歳の子どもたちに聞きました。子どもたちは一斉に「スプーン！」と答えます。「そう、スプーン。名前は、おさじさん」。そして「おやまを　こえて　のはらを　こえて・・・」と読み始めます。

絵本の「おさじさん」が手元にないので、内容を比べることができません。紙芝居の絵は瀬名恵子さんが手がけています。ストーリーは同じです。うさぎさんがおかゆを食べるのを、おさじさんが手伝う。絵本版でも、きっと最初の絵は、スプーンの話と一目でわかるものなのではないかと、今は想像しています。

おさじさんを「おいしい　ものを　はこぶ　きしゃぽっぽ。」とする譬えは、想像以上に子どもたちの反響がありました。「きしゃぽっぽ」の絵が登場するというだけで、こどもたちの作品に対する興味はぐ〜んと高まります。それ以来、食が進まない子どもへの掛け声は「お口のトンネルあ〜んと開けて！　おさじさんの汽車ぽっぽが行くよ！」です。

手づかみでもいいから自分で食事しよう、という時期を過ぎ、スプーンやフォークを自分で使おうよ・・・というお子さん向け。わたしの場合は、対象の子どもがいつも集団でいるので、紙芝居のほうが演じやすいのです。ご家庭では、絵本の「おさじさん」が大活躍することと思います。でもね、紙芝居の「おさじさん」、ホントに素晴らしいですから、最後にもう一度、しつこくおすすめさせてもらいます！

ムーラン